以前テレビを見ていた時に、某製薬会社のテレビコマーシャルでADCという言葉が出てきました。ADCとは antibody-drug conjugate の頭文字をとったもので、日本語では抗体薬物複合体と呼ばれています。

 抗体はよく鍵に例えられ、鍵と鍵穴のように特定のタンパク質(鍵穴)にしかくっつきません。つまり正常細胞と比べてがん細胞の表面に非常に多く存在するタンパク質にくっつく抗体は、がん細胞への「選択性」が高いと言えます。そこで、その抗体にリンカーと呼ばれるものを介して抗がん薬をくっつけたものがADCです(下図)。最近では、非常に強力な抗がん薬を抗体にくっつけたADCが次々に市場に出てきています。

 抗体を使って抗がん薬をがん細胞まで運びたいので、薬が途中で抗体から離れてしまっては元も子もありません。そこでリンカーの役割が大事になってきます。リンカーは、その種類によって切断される条件が異なりますが、基本的に投与して血管内を巡っている間は切断されないように設計されたものを使用します。

 通常の抗がん薬と比べてがん細胞への選択性が高いADCですが、残念ながら副作用がないわけではありません。さまざまな研究の積み重ねでADCが生まれましたが、さらなる改善を目指して、今もなおADCの研究は続けられています。