アメリカでは、医師からの処方箋が必要な医療用医薬品もテレビコマーシャルで流れます。古くはシルデナフィル(商品名:バイアグラ®)、最近では前立腺がんの内部放射線治療に用いられるルテチウム-177(177Lu)ビピボチドテトラキセタン(商品名:Pluvicto®)もテレビコマーシャルで流れていました。その対象となる患者さんにとっては、薬の存在を知るきっかけになり、また必要であれば診察時に担当医に質問することもできます。

 趣味など自分が好きな事に関しては、自分なりに調べて詳細を知ろうとしますが、自分の身体のことになると、自分から積極的に調べる人は意外に多くありません。専門用語が多く、なかなか理解しにくいということもあると思います。テレビコマーシャルであれば、見ているテレビ番組の合間に流れているものを目にすることになります。医薬品のコマーシャルでも、自分に関係なければ記憶にも残らないと思いますが、自分の病気に関係あれば調べるきっかけになります。がんの薬でも、ある特定の条件が揃った患者さんにしか使えないものがあるため、実際にその薬を使用するか否かの最終的な判断は主治医の先生に委ねられますが、患者さんとしても自分の病気や関係する薬について「知る」ことは大切なことです。

 日本では法律の問題で難しいのかもしれませんが、テレビコマーシャルをきっかけに、患者さんがいろいろな薬の存在を知ることができる世の中になればいいな、と思っています。