薬を使い続けた結果、効果が弱くなるまたは効かなくなることを「耐性」と言います。身近なところでは、抗菌薬であるメチシリンが効かなくなった細菌(黄色ブドウ球菌)の出現(MRSA)などがあります。特に院内感染の原因菌の一つとして話題となることが多いのがMRSAです。では、がん細胞も使い続けると効かなくなってしまうのでしょうか。
手術ですべてのがん細胞を取り除くことができればベストですが、万が一でも体の中に残っている可能性を考慮し、術後に抗がん薬などによる治療が行われることが多々あります(術後化学療法)。また抗がん薬でがんを小さくしておいた後、手術でがんを取り除くこともあります(術前化学療法)。いずれにしても、抗がん薬による治療で死なずに生き残ったがん細胞が増えていくと(下図)、薬で治療しているにもかかわらずがんの塊が小さくならなかったり、むしろ大きくなったりします。

また抗がん薬による治療の前から、もともとその薬に効きにくい性質をもったがん細胞もいます。使う薬によって効かなくなる原因を絞ることもできますが、別の薬に変えても効かない場合もあり、治療を難しくしている一因になっています。医療の世界に絶対はないので、耐性を持つがん細胞が必ず出現するとは限りませんが、がん患者さんの悩みの種の一つとなっており、早急な解決が望まれています。